『貸しボート十三号』 by 横溝正史 : 短編その2 『貸しボート十三号』 凄惨な事件現場に隠された謎
個人的な作品評価
項目 | 星評価 | コメント |
---|---|---|
猟奇度 | ★☆☆☆☆ | 事件現場は凄惨だが猟奇的ではない |
謎難度 | ★★★☆☆ | 犯人を自分で当てるのも、真相まで辿り着くのもかなり難しい。しかし筋は通っている。 |
体育会系友情度 | ★★★★★ | 退廃的ではなく体育会系なのは珍しい |
隅田川の川口で貸しボートが浮かんでいるのが見つかる。中には一組の男女の遺体が相雍するようなかっこうでふたりならんで横たわっている。女も男も首を絞められているうえ、胸を鋭利な刃物で刺されている。奇妙なことに女の死因は絞殺であり、死後に胸を刺されていたが、男の方はその逆。女は派手なレーンコートをまとっていたが、男の方はパンツひとつの真っ裸。加えてボートの中は真っ赤な血でおおわれていた。さらに凄惨なことに首がノコギリか何かで半ばまで切られてちぎれそうになっていた。謎が多すぎる奇妙な現場。その事件の真相は、複雑怪奇を極めていたのであった…
真相が分かってみると、なるほど、という感じで納得できる。もっと舞台設定と人間関係に凝れば長編名作に仕上がっていたかと。
登場人物
駿河譲治: X大学の学生、ボートのチャンピオン。
大木健造:役人。
大木藤子:建造の妻。
大木ひとみ:建造の娘。
上島亮: X大学教授、ボート部部長。
松本茂: ボート部キャプテン。
鈴木太一: ボート部マネージャ。
八木信作: ボート部の学生。アロハ。
矢沢文雄: 元ボート部の学生。
古川稔: ボート部の学生。
青木俊六: ボート部の学生。長脛彦。
児玉潤: ボート部の学生。セーター。
片山達吉: ボート部の学生。浴衣のおっさん。
関口五郎: ちどり屋の店員
神門貫太郎:金田一耕助のパトロン。
川崎重人: 神門貫太郎の実弟。
川崎美恵子: 重人の娘。
岩下トミ: 寮母。
高木一雄: 八木信作の義兄。
- 作者: 横溝正史
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2012/10/16
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
以下、ネタバレをある程度抑えた感想。
感想
「個人的な作品評価」で書いた犯人を推理で当てるのが難しい、ことの最大の理由は、犯人が突然自白するから。ので犯人を自分で当てたい人は要注意。いや、最初自白はダミーなのか、これから真実が語られるのか?とか穿った見方を最初してしまった…。
犯行現場の謎はいくつかあって、リスト化すると、
- 何故男は裸だったのか?
- 何故死因が異なるのか?
- 何故死因が異なるのに同じように偽装されているのか?
- 何故首が半分切られているのか?
と、なるがそれぞれにそれなりに合理的な理由が与えられる。この謎を推理することになるけど、実際は動機から考えるのが、分かりやすいような。これって金田一物には珍しい気がする。ええええ?という機微な人間心理が動機なことが多いという印象だから。同じ本に入っている『湖泥』も、これから推理するのは無理でしょって思ったし。まずは人間関係から、女性を殺したいの誰か?を考えるのをオススメします。
一行『貸しボート十三号』
体育会系なんだけど、ホモが出ないことが現代風じゃないね。
豆知識
『貸しボート十三号』は、『トランプ台の上の首』にも収録されているので購入するときは要注意。
- 作者: 横溝正史
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2012/10/17
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る