『出口のない部屋』 by 岸田 るり子 : 本格派ミステリと人間ドラマの融合
始めて読んだ作家なのだが、引き込まれるように一気に読んでしまった。他の作品も読んでみたい。
この本を特徴付けているのが、作中作である、ということ。『出口の無い部屋』という小説が出てきている。この『出口の無い部屋』は何故、誰の手によって書かれたのか、裏に横たわる現実との関係はなんなのか、三人の男女の接点とは。 どうも紙の本では、作中作と、それ以外ではフォントが異なり分かるようになっているそうだが、Kindleで読んだため、そこは分からなかった。残念。
ミステリーとして謎解きを楽しむのは結構難しい。伏線はひかれているものの、その最大の謎が明かされた時、その事実に読者が納得できるか、は正直議論が別れるところだと思う。その最大の謎とはもちろん『出口の無い部屋』の作者は誰なのか、だ。そして加えるならば、原稿を取りに来た編集者との関係は?ということになる。
元ネタ(?)であるサルトルの『出口なし』を知っている人ならばある程度予想が着いてしまうのかもしれない。
謎自体はエピローグまで全くとかれないので自力で解きたい人も安心。
登場人物
仁科千里:『出口の無い部屋』の作者。
夏木祐子:免疫学の研究者。大学講師。
秋葉安由美:研究者。キメラの孵化の成功。
夏木洋子:祐子の娘。
夏木孝臣:祐子の息子。
メイ子:孝臣の友達。
山本洋次:孝臣の同級生。
佐島響:中級作家。
新井沙智子:売れっ子作家。佐島の妻。
梅喜代:芸妓。
梅はる:梅喜代の妹分。
野島香織:毎々新聞社員
船出鏡子:開業医の妻。
船出浩一:鏡子の義理の息子。
山本明子:鏡子の連れ子。
自力で解決したい人へ気をつけるべきポイント
- 孝臣の性格
- メイ子の由来
- それぞれの眼の特徴
- 中川教授の眼
- メイ子の母親の再婚相手の職業
- 梅喜代の背丈
- 梅喜代と佐島の年齢
- 響子の子供の年齢関係
- 仁科千里に子供がいない理由
- 仁科千里が手紙を書いた理由
- 各章の最後の文章
と、伏線は沢山張り巡らされているのが、読み返すとよくわかった。
- 作者: 岸田るり子
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2012/04/25
- メディア: 文庫
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ここから完全なネタバレ。
仁科千里 = 孝臣 = 梅喜代
佐島響 = 山本洋次(メクジ)
メイ子 = 鏡子の娘(明子)