『テイクダウン―若き天才日本人学者vs超大物ハッカー』
内容
伝説的なハッカーである下村努(ノーベル化学賞 下村脩の息子として有名)が、大物クラッカーであるケビン・ミトニックの逮捕へ尽力する話。映画化もされたようだけど、だいぶ内容が違うとか?
読みにくいんだけど…
内容的に面白そうなんだけど、ちょっとだけ読みにくい。恐らく理由は2つ。
邦訳であること
と言いながらなんだけど、すっごく上手く訳してあると思う。技術的な内容を含んでいるんだけど、分かり難い部分にはちゃんと説明を入れ、適切な訳語をあてている。それでもやっぱり邦訳は読みにくい。英語ならではの周りくどい表現とかをそのまま訳すからだろう、と思うんだけど。超訳とか、考えた人はえらい。
作者がプロじゃない
ストーリーがあんまり盛り上がりを意識せずにダラダラしていたり、下村努自身の生い立ちが書かれていたり、恋人であるジュリアのことが書かれていたり、どうもまとまりがない。
アメリカでも出る杭は打たれる
よく、日本では、出る杭は打たれる、その一方、アメリカは多様性を認めて、そんなことは無い、とかいう人がいるけど、そればかりではない、ということがツトムの半生を見ると分かると思う。いくら優秀でも、授業態度が悪かったら疎んじる教師はいるし、放校されだってする。たしかに最終的にはツトムはファインマンに拾われたり、ロスアラモス国立研究所で働いたりできているが、それは幸運だった一面もあって、やっぱりアメリカでも打たれて潰れる杭もある。日本だって、潰れなかった杭もある。
日本では、潰れた杭も親しいから見ることが出来て、アメリカに対しては遠くからは成功例ばかり見えるから、親しいのは悪く見えやすい。ま、完全に一緒、とは言わないけれど。
社会工学 = ソーシャル・エンジニアリング
ミトニックは社会工学を得意としていたっていうのは、とても意外な話だった。と、同時に一瞬社会工学、がソーシャル・エンジニアリングとは気が付かなかった。いや、そのままなんだけど、今はソーシャル・エンジニアリングで全然通じるから。訳語がきになるとすれば、これが唯一かな。