『ジュリエットの悲鳴』 by 有栖川有栖 : ミステリーっぽくないバラエティに富んだ短篇集
こういう人にお奨め
短篇集やショートショートが好きな人。特に、阿刀田高とか、筒井道隆のようなちょっと不思議な話が好きな人。世にも不思議な物語が好きな人。
他の短篇集の名手に負けないくらい読みやすい作品群。
概要
8つの短編と、4つのショートショートが入っている。統一的なテーマなどは無く、色んな場所で書かれた短編の寄せ集め。僕はこの作家の小説は、江神二郎シリーズの、『月光ゲーム Yの悲劇'88』『孤島パズル』『双頭の悪魔』を今まで読んだことがあるだけだけど、かなりテイストが異なる。江神二郎シリーズはまさに本格ミステリーということで、トリックや推理がじっくり楽しめるが、『ジュリエットの悲鳴』はもっと気楽に読むものだ。月光ゲームとかは初期に書かれたこともあってか、トリックは面白いけど文体にややた硬さが感じられた。が、それも『ジュリエットの悲鳴』では、こなれたものになってきている。こういう作品も書くのか、ということがちょっと意外で、それを知ったのが収穫だった。
よくない点をあげると正直、ネタとしてはワンアイデアで書かれたものが多く、ちょっと練り込み不足かな?と思われるものも見受けられるのが残念。ショートショートは本来短編もしくは長編にできそうなネタをさくっと書くことによる贅沢さ、が個人的には好きなので、パッとした思いつき程度なんじゃないの?とか、このネタってよくあるよね?とか。後書きで触れられているのだけど、テーマを与えられて書いたものもあるようで、そのためなのかもしれない。上記感想は飛行機内であるような機内誌で書かれる小説とかにもよく感じるし。
ミステリーとして楽しむにはちょっと物足りないが、その反面パロディものである『登竜門が多すぎる』は、はじめの方の、「虫太郎」とかからニヤニヤ読める名作(?)だ。これが清水義範っぽいというのか、なんというのか。東野圭吾の『超・殺人事件』にも通じるものを感じる。
- 作者: 有栖川有栖
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- 作者: 東野圭吾
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