たたたた。

あんまりじろじろ読んじゃ嫌。

『ゲーム理論で考える企業会計』 : 会計と法律に対して少し違う角度からの理解ができるようになる

まさに題名通り、ゲーム理論を用いて、企業会計というものを分析してみよう、という極めて野心的な本である。企業とは利益を追求するものである、との仮定の元、その行動を予測もしくはコントロールする方法をゲーム理論を用いて説明する。取り上げられているテーマは、

  • なぜ企業は会計操作を行うのか?
  • なぜ会計規制は必要なのか?
  • 会計規制はどのように企業の行動に影響するのか?
  • 会計制度はどのように決められるべきなのか?

等など。

用いられているゲーム理論は初歩のものが多いのだけど、今までゲーム理論を学んだことのなかった人にはちょっと難しいのかもしれない。

しかし、この本はゲーム理論の勉強本では無いので、分からない場合はそれほど頑張って分かる必要はないと思う。恐らく、著者もそう思っていて、ナッシュ均衡などは付録に持って行って気になる人だけ読めばいい、というスタイルになっているのだと。

この本の言いたいことは、本当にゲーム理論を勉強して、それを企業会計戦略に用いよう、というものではなく、違う理解の方法を与えてくれるものじゃないか、と。例えば、企業の不正に怒りを感じたり、法律の不合理に疑問を感じた時に。

不正をする企業がいるのは、その方が利益につながるためだし、誰のためかよく分からない、誰もが損をするとしか思えない規制ができるのは、その影響によって、コントロールができるから。これは企業だけではない。人も同じだ。政治家であれ、公務員であれ、時として明らかに間違っているとしか思えない発言、決断をするように見えて、馬鹿じゃないの?とか思うことも多いだろうが、大体の場合、彼らはそこまで馬鹿じゃない。彼ら個人にとってはなんらかの利益があるのでしているのである。

企業も人も、全体最適を目指すことはなく、個別最適を目指すのだ。その個別最適を全体最適の方向性と出来るだけ一致させるような枠組みを作り上げた組織が強い組織となる。

ゲーム理論を本気で実世界に結びつけることの難しさ、もこの本が示すもう一つのことだろう。ちょっとやろうとすれば分かることだけれど、現実世界を正確にモデル化することは極めて困難だ。パラメータの数が多すぎるし、重み付けもどのようにやったら良いか、分からない。その一方、本で度々示されるように、評価パラメータをほんの少し変えただけで、最適戦略はガラッと変わってしまう。

もしゲーム理論に興味を持たれた人も、やるのは、遊び程度にしといたほうが良いと思う。
それか、人生をかけて挑むか、だ。

ゲーム理論で考える企業会計―会計操作・会計規制・会計制度

ゲーム理論で考える企業会計―会計操作・会計規制・会計制度

ゲーム理論といえば、アルゴリズム。興味をもった人はこっちもオススメ。人生をかけて挑んでいる人もいるってことで。

アルゴリズムが世界を支配する (角川EPUB選書)

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