たたたた。

あんまりじろじろ読んじゃ嫌。

『蛍』 by 麻耶雄嵩 : 楽しみたいのならじっくり時間をかけて味わいながら読みましょう。でもさっさと読んでも面白いです。

あらすじ

ヴァイオリニストの加賀蛍司はレンガ屋敷「ファイアフライ館」で突如狂気に襲われ、その場にいた仲間である演奏家7人に次々襲い掛かる。その結果、6つの死体が残され、1人は行方不明に。

大学のオカルトスポット探検サークルの六人は、今年もそこに肝試しに向かっていた。昨年とちがうのは半年前、女子メンバーの一人が、殺人鬼ジョージに殺され、その動揺をまだ引きずっていたこと。

ノコノコやってきた大学生とその他1名に、当然のように殺人が再び発生!どうなる探検部!生き残るのは誰だ!蛍の意味するものとは?

こういう人にオススメ

じっくり時間をかけて一冊の本を読みこなせる人。

  • 今回の殺人の犯人は誰か?
  • ジョージとの関係性は?

感想

正直、極めて読みにくいです。一人称と三人称が混在し、今誰が語っているのか、等が極めてつかみにくい。ただ、本当にトリックを楽しみたい、自分で解きたい場合はここが極めて重要になるのでしっかりと考えながら読みましょう。そうではない、ライトに楽しみたい僕のような人間は余り深く考えずにさくさく読みました。それでも十分楽しめます。僕の場合は、うーん、これ書いているの誰やねん、実は登場人物もう一人いるパターン?とか思って読んでいました。しかし、これは館内地図の部屋割りから否定されています。

この本は、結構賛否両論分かれているんだけど、それは小説に何を求めるか?ミステリに何を求めるか?によるんじゃないかなあ、と考えている。最初の分かれ目は

  • 文章を重視するか
  • ストーリーを重視するか

だ。ここで文章型の人間は、先ほど書いたような分かり難い文章に怒り心頭、なんじゃこれ、となる。 で、次にストーリー派であっても、

  • 人間ドラマを重視するか?
  • トリックを重視するか

で、また別れる。ここで人間ドラマ派の人間は、こんな人間おらんやろ、不自然だ、とかでこれまた不満たらたら。

で、最後にいる否定派は、スレッカラシの本格派マニア。この人達は大概否定するのでちょっとどうしようもない。

という訳で、「面白い仕掛けあれば、多少読みにくくても不自然でも楽しめて、ひねくれてはいない人」に、とてもオススメです。ワンアイデアで書かれる作品もあるなか、この複雑な仕掛けを作るのは相当な苦労があるはずで、安易な批判で楽しまないのはとてももったいないです。

螢 (幻冬舎文庫)

螢 (幻冬舎文庫)

以下、少しネタバレ

最初に違和感を感じたのが登場人物のイニシャル。ある一人以外は、姓名のイニシャルが同じになっていること。ここから、あの人が偽名なんだろうな、ということは早々に気がついていて、これがものすっごく鍵になるに違いない!とか思って読み進めていた。途中できっちり、イニシャルに触れる部分もあるし。でも、しかし、それは全くと言っていいほど謎の解明には役立たず…。