たたたた。

あんまりじろじろ読んじゃ嫌。

『天使の屍』 by 貫井敏郎 : 90年代後半、中学生というものがどのように見られていたかの雰囲気が分かるミステリー

こういう人にお奨め

テンポ良くミステリが読みたい人。ミステリに深いトリックなどを求めない人。ひと昔前の時代の空気感を味わいたい人。

はじまり

中学二年の少年がマンションから飛び降り自殺をする。少年は成績優秀であり、精神的にも強く自殺するような人間ではなかった。疑問を抱いた父親は、クラスの担任や同級生達に聴きこみを行い始める。

徐々に判明する事実と新たな謎。少年はLSDを使っていた。突然かかってくる強請の電話。少年が女性と絡んでいるビデオの存在。少年の友人のさらなる自殺。発見された遺書。何故少年は自殺せねばならなかったのかの謎が最後に明かされる。

謎を解きたい人への手がかり

最大の謎は何故、少年たちが次々に自殺をしたのか。その鍵は自殺をした順番。最も自殺をしないだろう、勇気ある少年が最初に自殺をした、という事実と、同時にした訳ではないということ。つまり、自殺は単純に世の中を儚んでした訳ではない、ということが想像できるはず。順番にする、ということは、最初にした少年と、その後の少年で理由/目的が違うということ。

真実は最終章(33)まで明かされません。ゆっくり考えれます。

ここからネタバレの強い感想

手がかりについて上記のように書いたんだけど、心中自殺でも良かったんじゃない?という気がする。一人自殺しちゃうと、その段階で意図に気がついてしまい、警戒する人がいるような。 雰囲気、キーワードはまさに90年代を象徴する。少年の薬物問題、偏差値教育の弊害、受験戦争。時代を知らない現代の中学生が読んだ場合、どのような感想を持つだろうか?ということが気になった。自殺するなんて、馬鹿馬鹿しいと思うのだろうか?それとも、この心情が理解できるのだろうか?

事件の解決を図る主人公と、自殺した少年は血が繋がっていないんだけどその設定は必要?父と子の絆とは、という問題提起なのかもしれないが、どうもうまく繋げれていないように感じる。

さっくり読めるけど、色々考えることが出来るテーマが含まれているので、読んで損した~という気にはならないです。

天使の屍 (角川文庫)

天使の屍 (角川文庫)